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価値創造ストーリーに「独自性」を持たせるには
価値創造ストーリーに「独自性」を持たせるには

価値創造ストーリーに「独自性」を持たせるには

2024/07/12・by遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

記事のポイント


  1. 日本企業の成長期待の向上に向けた情報開示の課題克服が求められている
  2. ビジネスモデルや戦略の記述情報と既存の法定開示書類の一体化を
  3. 「記述情報の内容・質」に加えて独自の価値創造ストーリーが重要だ


資本市場が重要視する企業価値に関する指標として、PBR(株価純資産倍率)や PER(株価収益率)、ROE(自己資本利益率)などがあります。足元の収益性・資本効率を示すROEは徐々に改善していますが、PBRやPERに関しては伸び悩んでいます。企業は、独自の価値創造ストーリーを描くことが重要です。(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見)


企業の情報開示は、投資家の投資判断の基礎となる情報を提供するものであり、それを通じて中長期的な企業価値の向上を図るものでもあります。近年、日本企業の情報開示は「情報の内容・質」「開示体系」などの観点から課題が指摘されています。


経産省は、将来に向けた方向性として、ビジネスモデル、価値創造プロセス、戦略などの記述情報と既存の法定開示書類を一つに集約するという大胆なグランドデザインを提案しました。企業にとって重要なことは、それら記述情報の内容及び質であり、独自の価値創造ストーリーです。


日本企業の成長性に関する投資家の評価は総体的に低い


資本市場において重要視される企業価値に関するパフォーマンス指標として、PBR(株価純資産倍率)や PER(株価収益率)、ROE(自己資本利益率)などがあります。


過去10年間、足元の収益性・資本効率を示すROEは徐々に改善してきていますが、PBRやPERに関しては伸び悩んでいます。PBR= PER×ROE であることから、この状況は、国内外の投資家による日本企業に対する将来の成長期待(PER)が、業種や企業により違いはあるものの、依然として総体的に(欧米企業との比較においても)低いことに起因しているという見方もあります。


何故、日本企業に対する将来の成長期待が総体的に低いのでしょうか。


これには様々な要因が考えられますが、一つには、日本企業による情報開示の問題点が挙げられます。日本企業による情報の開示量は増えているものの、その内容と質がなお不十分(将来の成長を期待できるものになっていない)、または、投資家等アピールすべき利用者に情報が効果的に伝わっていない、といったことが考えられます。


このような課題認識に基づき経産省は、2024年4月に「企業情報開示のあり方に関する懇談会」を設置し、議論を重ねてきました。6月25日、これまでの3回の議論の結果を「課題と今後の方向性(中間報告)」として公表しました。