傷ついたウミガメの飼育・リハビリ体験を観光客にも 大分NPO

記事のポイント
- ウミガメが回遊する豊後水道は、生物多様性のホットスポットだ
- 毎年数百のウミガメが、漁業混獲で損傷し、治療も受けられず海に帰される
- ウミガメ支援のNPO は観光客にも救出・治療後のリハビリ体験を提供する
観光を通じて、生物多様性の保全などのサステナビリティへの意識を高める取り組みが進んでいる。立命館アジア太平洋大学サステナビリティ観光学部のジョーンズ・トマス教授に寄稿してもらった。
The original English text follows the Japanese text. (日本語の後に英語の原文が続きます。)

ジョーンズ・トマス
立命館アジア太平洋大学(APU)サステナビリティ観光学部教授。イギリス出身。留学生として来日し、2010年に東京大学で博士号(農学)を取得後、明治大学ライム研究科 (公共政策大学院)特任講師を経て現職。研究テーマは、保護地域の企画・管理、持続可能なライフスタイル、環境政策など。日本の自然公園(北アルプス、富士山、阿蘇くじゅう国立公園など)やアジア各地の自然保護地区で管理・運営・利用の意識調査を実施。最近は、スノーモンキーやイルカ島をはじめとしたワイルドライフ・ツーリズムに関心を持っている。
豊後水道は九州と四国の間にある海峡です。瀬戸内海からの海流と太平洋からの暖かい黒潮が混ざり合う生物多様性のホットスポットです。海岸線には、穏やかな海と豊富な餌を求めて、ウミガメなどの大型の海洋脊椎動物が集まりますが、漁業が盛んなため、年間1,000匹余りのウミガメが混獲されていると推定されています。
ウミガメは、海洋プラスチックを誤食しているケースが多く、マイクロプラスチックバイオモニタリングの指標種でもあります。
NPO法人おおいた環境保全フォーラムは2016年、はざこネイチャーセンターを設立しました。九州の大分県鶴見半島の東端に位置するこの保護施設は、地元の漁網に誤ってかかってしまったウミガメの救出とリハビリを行っています。
この施設で飼育されているウミガメは、世界に7種類いるウミガメのうち、アオウミガメ、タイマイ、アカウミガメの3種類です。
救出されたウミガメは、2~3か月のリハビリテーションを受けてから太平洋に放流されます。海水ポンプなどの水族館のような設備を備えた飼養水槽は、治療のため一時飼養するウミガメから排泄されるマイクロプラスチック類の採集調査するために使用されます。
2019年夏の予備期間では、約200人がプログラムに参加し、カメのリハビリテーションと海への放流(野生復帰)を観察しました。