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「地域と共に生き、成長する
播州織の魅力をあなたへ」
江戸時代からの歴史を持つ播州織。
先染めで作られる糸によって織られた生地は、繊細なグラデーションも鮮やかなデザインも表現することができる。
播州産地と呼ばれる兵庫県西脇市は、日本屈指の綿織物産地だ。
そんな西脇市で100%メイドイン播州・メイドインジャパンを掲げ、播州織の魅力を発信し続けている会社が「株式会社播」だ。西脇市に本社を構え、地域と共に成長してきた織物製造会社。その活動は製造にとどまらず、実店舗で販売したり播州のアンテナショップの役割を果たしたりと多岐に渡る。
全ては産地の発展と、播州織の継続のために。
ピーク時の30分の1まで生産量が減り、海外工場生産が当たり前になりつつある現代で国内生産にこだわり、新しい挑戦の積み重ねで播州織の可能性を広げ続けてきた。
その背景には、大切なふるさとへの強い想いがあった。産地と共に生きる株式会社播の、想いとストーリーを聞いた。
「播州織-地域の恵みと共に発展した地場産業」
播州織は兵庫県西脇市を中心とするエリアで栄えた織物で、江戸時代から約220年ほどの歴史がある地場産業だ。
起源は京都の西陣織にあり、播州の宮大工が京都で仕事をしていた際に織機や機織りの技術を学び、地元に持ち帰ったのが始まりとされている。
西脇市は山に囲まれ、加古川・杉原川・野間川と3本の大きな川が流れている土地。盆地で湿度が高い京都に似た環境だったため、機織りが栄えるのに時間はかからなかった。
さらに西脇市の川の水は軟水で金属を含まず、染色に適していたのも拍車をかけた。
西陣織との大きな違いは、素材と染色方法。
西陣織は絹を中心に扱っているのに対し、播州織では綿を使用している。
また、播州織は糸の染色を後染めではなく先染めでおこなう。手間はかかってしまうが、繊細な色合いを表現することができ、鮮やかな柄やグラデーションを制作できるのが魅力だ。
地域とともに発展した播州織という地場産業。
盛り上がりがピークだった1970〜1980年代は欧米やアジアへの輸出も盛んで、全国各地から女工が来るほどだった。
織機をガチャンと動かせばそのたびに万の利益が出ると言われた「ガチャマン」の時代。映画館などの娯楽施設も増え、町は人でにぎわっていた。
その後、社会的要因や為替の影響もあり生産量はピーク時の30分の1と言われるまで減少した。それでも西脇市は織物の生産地として、日本国内ではまだまだ大きな産地となっている。
「永続のためには変化が必要。
古き良きを活かして新たな風を。」
株式会社播は1968年創業。
播州織を手がける会社は家族経営で代々続いているところが多いが、株式会社播は技術を学んだ職人が集まって共同で立ち上げた、比較的珍しい会社だ。
播州織の世界は基本的に分業制。糸染め、糊付け、機織り、加工など全てが専門の企業によっておこなわれている。
その中で株式会社播は、それぞれの工程を取りまとめる産元を担っていた。
お客様からオーダーを受け、生地の設計をし、糸を購入する。そして各企業に加工指示を出し、完成後納品する。自社工場を持っていたわけではないが、それぞれの得意分野で最高の播州織を作ろうとする分業制の形は町全体が一つの工場のようだった。
産元としての事業を45年ほど続けたが、織物の需要が減り、生産量が落ちていく中で会社をたたむ企業が増えていった。その背景には、職人の高齢化や家族経営が故の後継者問題などもあった。
時代の流れに押されつつあったが、廃業の道は選びたくなかった。
まだまだ続けたいし、播州織という地場産業をこれからも盛り上げていきたい。でもこのまま工場が減っていくと、ものづくり自体が難しくなってしまう。
今の形のままではだめだ。
こうして2012年、廃業予定だった織布工場を買い取らせていただき、自社工場としての運用を始めた。
2015年には最新の織機を20台導入。工場を増やし、全体の6〜7割の生地を自社で作れるようになった。
「こだわりのメイドインジャパンを播州から」
商品へのこだわりは【100%メイドインジャパン】。
海外に工場を設ける生産の在り方が主流になっている時代の流れに逆行し、100%国内での製造をおこなっている。
地域と共に発展してきた播州織。
地場産業だからこそ、国内生産には強いこだわりを持って創業当初から守り続けている。
fabori(ファボリ)は播州織のストールブランド。
お気に入り(favorite)・織物(fabric)・日本語の織り(ori)という意味が込められており、播州織を気軽に楽しんでほしいと100%国内生産のストールを適正価格で販売している。
デザインは染色を先染めでおこなう播州織の魅力を最大限に活かし、後染めでは体験できない色の変化を表現。
水彩画のように色が緩やかに混ざりあう繊細なデザインを楽しめる。
2023年、西脇市に新たな縫製工場を立ち上げた。
産元と生地メーカーとしての業態だけでなく、生地生産から最終加工まですべてを自社でおこなえるようになった。
これが大きなターニングポイントだった。
自社製造した製品を販売できるよう、2024年4月にもともと事務所があった東京 蔵前に自店舗「Boon Life Base 蔵前店」を開店。
2024年9月には西脇市の縫製工場の隣にも新たに「Boon Life Base 西脇店」を構えた。
今までは法人相手に商品を卸すことがほとんどだったが、自店舗を構えたことで直接一般のお客様に播州織を届けられる。
現状維持なら織物の需要は減る一方であることが分かっているからこそ、今までにないことをして新たな可能性を生み出したかった。
Boon Life Baseでは、ワンピースやシャツなどアパレル商品の販売をしている。
社内にデザイナーがいない中、パタンナーと何度もやり取りを重ね播州織を感じられる商品を作り上げた。
メイドインジャパンの商品は高価になることが多いにもかかわらず、Boon Life Baseの商品は比較的手に取りやすい価格だ。
「なるべく手に取りやすい値段で、いろんな人に使ってもらいたい」
という社長の思いが込められている。
蔵前店では他社商品も取り扱い、播州のアンテナショップの役割も果たしている。テーマは「播州で作った服と暮らし」。
いつか北海道や沖縄のように、名前を聞くだけでブランドを感じるような存在に播州がなれるよう、微力だとしても発信を続けていきたい。
「原動力は故郷の思い出」
西脇に縫製工場を設けたことにより、「メイドインジャパン」だけでなく「メイドイン播州」を掲げられるようになった。
メイドイン播州・ジャパンは株式会社播にとってアイデンティティであり、存在意義だ。
少しでも多くメイドイン播州の商品を世に届け、播州織の産地を盛り上げていくことを目指している。
それにより、織物の需要と生産量自体も増加し、地場産業が永続的に続いていくように。
大手のファッションブランドとコラボをしたり、地元中学の制服を生地から縫製まで全て請け負ったりと株式会社播の思いは一歩一歩、多くの人に広まっている。
今までは自社でしか販売してこなかったが、今後はECサイトなどでも販路を広げ、様々な人の目に触れる機会を増やしていく予定だ。
西脇市の住民にとって大切な播州織。
近所には何軒も機屋があり、織機の間に隠れてかくれんぼをした頃もあった。親戚の誰かは播州織に関わっていた。生まれたときからそばにあり、暮らしに身近なもの。
縫製工場のスタッフには播州織に惹かれている地元の女性を多く採用。
地元が西脇の社員は、思い入れが強い人が多い。
何とか継続していきたい。
そう思えるふるさとの誇りを日本のみならず世界の人々へ。
決して諦めない株式会社播は、これからも変化を恐れず播州織に新しい可能性の風を吹かせていく。