『写真集：花』は、花道家・上野雄次と写真家・中里和人による共著の写真集です。 2012年よりJikonka Tokyoにてスタートした「花」の撮影をきっかけに、数年にわたるフィールドワークと対話を重ねながら制作されました。 2015年に刊行された本作は、H364×W262mmの大判サイズ／全64ページという構成で、ひとつひとつの作品が持つ空気感や緊張感を余すところなく伝えます。 表紙には大胆な切り抜き加工が施され、奥に差し込まれた写真の断片が“花”というテーマの多層性を静かに示唆する、意欲的な造本デザインも特徴です。

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『写真集：花』は、単なる「生け花」や「写真」の枠を越え、存在の境界線に触れるような表現を目指して生まれた一冊です。

上野雄次が生ける花は、日常や形式から解き放たれた“いのちのかたち”であり、中里和人の写真は、その儚さと強さを空間ごと包み込むように写し取ります。

都市の中の空き地、光が差し込む室内、あるいは何気ない風景の中に現れる花たちは、場所と時間、そして人の眼差しによって姿を変え、ただ「そこにある」ことの美しさを語りかけてきます。

この写真集は、完成された作品集であると同時に、見る人の中で新たに立ち上がる「花の記憶」を残します。

静けさと余白の中に、感情や気配を読み取るような、深く豊かな鑑賞体験をもたらす一冊です。