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漆のお箸 十八膳 つぶら
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漆のお箸 十八膳 つぶら

漆のお箸 十八膳 つぶら

2022/05/06・by漆のお箸 十八膳漆のお箸 十八膳

「漆のお箸 十八膳」は、株式会社橋本幸作漆器店のブランドです。

私たちは昭和25年(1950年)の創業以来、自然豊かで伝統ある地、輪島にて、半世紀以上、輪島塗とは別の産業として箸製造業に携わってきました。天然木・天然漆を用いた箸は多くの評価を頂き、「石川の工芸百選 選定商品」「石川県デザインセンター選定商品」「石川ブランド優秀新製品賞認定」など、数々の賞を受賞しています。

現在、漆は高価で取り扱いにくい、というイメージばかりが先立ち、漆離れが進んでいます。そこで、私たちは、もっと気軽に漆を感じて欲しいという想いから、令和3年、今の暮しになじむ「漆の箸」を生み出したいと考えました。

それが、「十八膳」です。能登の銘木「能登ヒバ」と、唯一の天然塗料「漆」を用いて、一膳ずつ丁寧に、職人が仕上げています。

自然素材だけでつくられているので安心してお使いいただけます。




輪島で受け継がれてきた、箸づくりの家業



広大な日本海と、豊かな自然環境に恵まれた石川県能登半島は、自然と人とが共生する生き方が、いまも息づいている場所です。里山と里海には多様な生物が暮らし、2011年には、「世界農業遺産」にも登録されました。

私たちの箸づくりの家業は、能登半島から北に向かった先にある、輪島で行われています。


橋本幸作漆器店の始まりは、昭和25年のこと。初代、幸作が、輪島塗の職人として技を磨き、橋本幸作漆器店として独立・開業し、箸製造を始めました。

家業は、4代目へと受け継がれています。4代目となる彼女は、3兄弟の真ん中だったこともあり、当初は箸製造という家業を継ぐことは考えていませんでした。実際に、高校卒業後に家から出ると、他業種の仕事をしてきました。しかし、たまたま実家に戻ってきたことをきっかけに、家業を手伝うようになり、本格的に受け継ぐことを決めたのです。

2代目である父の背中から仕事を学び、現在、3代目の母と、5名の従業員とで、日々、丹精を込めて「箸と一緒に幸せを作れる会社」を信条に、箸づくりに邁進しています。




“漆離れ”のはし架けに


そして現在。ふと気がつくと、漆の質感に触れたことがない、という人が多いと感じるようになりました。理由は様々ですが、「高価で扱いにくそう」というイメージが先行しているためであると思っています。

例えば、輪島塗。「布着せ」や、「輪島地の粉」という下地が使われるなど、100以上の工程によって出来上がる一級品です。輪島塗のお箸の場合、高いものだと一膳8万円するものもあります。

漆=高級で、気軽に使えるものではない。

そんな印象から、この素晴らしい伝統工芸品に触れる機会が少なくなり、それによって、もし文化そのものが失われてしまうのだとしたら、それを食い止める一手が必要です。


漆は、縄文時代ごろからすでに人々の暮らしとともにありました。耐久性があり、見目鮮やかな漆は、仏像や、建築物、手箱など様々に用いられ、神秘性や栄華を表す色彩の象徴として日本文化を支えてきたのです。

漆はその塗肌の温もりや質感に安らぎを覚えることから「癒しの塗料」とも呼ばれています。そんな漆を通し、日本という島国で何世紀にも渡って伝えられてきた、大切な歴史そのものを感じられるのではないでしょうか。


いまや、持つ人も少なくなってしまった漆器。

私たちは、70年以上受け継がれてきた箸づくりを通し、その魅力を少しでも多くの方に知っていただきたいと考えました。




職人の技が光る、漆のお箸「十八膳」


長年、自分たちが培ってきた技術を元に、現代風のスパイスを加え、新しい漆のお箸を生み出すことを、私たちは思いつきました。


それが、「十八膳」という漆の箸。

お伝えしたように、「輪島塗」ではあまりに高価になってしまうため、輪島塗とされる条件を削ぎ落とし、しかし、新たな漆の魅力が伝わるよう、漆箸を代々作り続けている工房で、“十八番(おはこ)”とする技術を生かし、熟練の職人さんと共に一つ一つ心をこめて丹念に仕上げています。



また、食事は、人が生きていくうえでいちばん大切なこと。その食事をする際に欠かせないものが、お箸。心のこもった料理が格別なおいしさであるように、お箸もまた心を込めてつくることがとても大切だと私たちは思います。

そのため、「十八膳」は、自然由来の天然素材──能登ヒバと漆だけでつくり上げています。


木地となる、国産の能登ヒバは軽く、抗菌性にすぐれ、優しい使い心地を味わえます。

また、木の樹液で唯一の天然塗料である漆にも抗菌性があり、漆特有の心やすらぐ質感と色合いから、手にとても馴染むことと思います。

塗りに化学塗料などは使っていませんので、口に含むもの、食品を運ぶものとして、安全にご利用いただけます。




漆のお箸が出来上がるまで


コストを抑えつつ、漆と能登ヒバの良さを活かし、デザインも手に取りやすいオシャレなものにする──何度も議論を重ね、試作をしながら、十八膳は一歩ずつ完成の道を歩みました。

どうしたら多くの方に箸を手にとっていただき、気に入ってもらえるか。


十八膳は、実に多くの方が関わり合い、世に生み出されました。

職人による塗り方のバリエーション、デザイナーによる人目に触れるデザイン、カメラマンの写真、コピーライターの言葉、ディレクターによるサポート、広報資料の作成、SNSでの発信、etc。また、営業活動や展示会での販売店様との出会いにより、商品を世の中に送り出すことが出来たのです。


具体的に、十八膳が出来上がるまでの工程は、塗りや絵つけ、検品など様々にあります。


■木地

木地は、箸木地専門の木地屋さんが製造されているものを使っています。

納品された木地を検品し、曲がりや不良品がないか、細かくチェックします。箸先の太さや角度が均等でないものは、検品後手直しをします。




■漆

唯一の天然塗料といわれる木の樹液・天然漆を使用します。

塗る直前に、漉し馬(漆を漉す道具)と漉し紙(和紙)を使い、塵が混じらないよう漉していきます。

準備ができたら、いよいよ塗りです。私たちはデザインに合わせて塗り方を変えています。「拭き漆」という、木地に漆をすり込み、余分な漆を拭き取る技法も取り入れています。これにより、木目を生かした仕上がりが可能になるのです。

代々受け継がれてきた道具を用いて、木地に漆を吸い込ませるようにします。

その後、拭き残りやむらが出ないように拭き上げます。

こうして、能登ヒバの美しい木目が浮かび上がり、ぬくもりを感じられるナチュラルな使い心地に仕上がるのです。




■乾燥

漆を塗った箸は、塗師風呂という、漆器を乾かすための密閉した室に入れ、温度と湿度の管理を行い、しっかりと乾燥させていきます。

漆は不思議な塗料で、湿度がないと乾きませんし、湿度がありすぎると、逆に乾きません。塗った直後と、1時間後、さらに乾いた後で色が変化するのですが、湿度によって赤い色が黒になったりします。天然漆ですので、塗った日によって色味に異なりが生じることもあります。また、日がたつと色味がさえてくるのも漆の特徴です。


■研ぎ

漆の上に漆を塗り重ねるには研ぎの工程が必要です。

手にしたときに、あたたかみを感じられるよう、箸それぞれの風合いや仕上がりに合わせ、研いでいきます。職人は何度も手触りを確かめ、質感を高めます。




■模様付け

若い世代の方も手にされたときに、いつもの食卓がより鮮やかなものになるように──。

多様なライフスタイルに似合う、伝統にとらわれないデザインを私たちは考案しました。

模様は、漆や金、新しい色合いの金彩粉などを用いて、一本一本、ゴムの型に箸を転がしてつけていきます。それぞれの模様や、位置によって、箸を転がす力の入れ方や、回転の仕方を変えねばなりませんので、熟練の技が光ります。


他にも様々な工程と、検品を経て、出来上がった十八膳。

一般的に想像される漆箸は、漆を塗り重ねて木地が見えず、ツルツルしていると思います。しかし、私たちの十八膳では、むしろ木地の木目を味わい、木の素材を感じられる仕上がりにしています。木地と漆とが、相互に美しく作用しあった結果です。





箸づくりを通し、能登の森を守る


石川県は、その土地の約7割が森林です。そのうちの4割程が、県木である能登ヒバや、スギなどの人工林となっています。

一般的に、森林を守る=植林、というイメージが先行しがちですが、健康な森をつくるには、植林後、育った木を間伐することが必要になります。間伐をせずに放置をしてしまうと、木々間が過密し、根を十分に張れなくなってしまい、土砂崩れが起きやすくなってしまうからです。定期的に間伐をし、森を管理することで、十分に周囲の植物に陽が当たり、豊かな土と山と川の循環を作っていくことができるのです。そのため、植林するだけでなく、間伐も行う必要があります。

そして、重要なことは、間伐した木をきちんと活用すること。間伐材がうまく活用されなければ、その分が赤字となり、林業が衰退する一因になります。そこで、私たちは箸づくりを通し、能登の美しい森を未来につないでいきたいと思っています。


能登ヒバを使い、毎日同じ品質の仕事を行うことで、森の循環と、製造スタッフの雇用を守り、産業を持続させることを大切に、より良い商品を皆さまへお届けいたします。




唯一無二のお箸で、食卓に彩を


十八膳は、自然素材を使っているため、同じ塗りのように見えても、木目の違いで漆のしみ込む様子が異なります。そのため、あなたが手にする箸は、世界にたったひとつのものなのです。能登ヒバの軽さや温もり、漆独特の手触りは、実際に手にした人にしか分かりません。


箸の見た目、手と口で感じる木と漆の触感。五感に触れる一膳で、より素敵な食事の時間をお過ごしください。


ぜひ十八膳のお箸の中から、あなただけのお気に入りをご自分のために、またご家族のからだを思って。

さらに遠く離れている大切な方の健康を願って選んでいただけましたら幸いです。