SIRA PLEATED WRAP SKIRT
MUSKAANについて
希少なヴィンテージ着物をアップサイクリングし、新たな価値を生み出すことをコンセプトとしているMUSKAAN(ムスカーン)。
伝統的なテキスタイルが持つ豊かな図案や織を通して、忘れかけられている日本の生活や文化の根底にある美意識を見つめ直し、現代のライフスタイルにあったデザインに落とし込んでいます。すべてが生分解性のある正絹を素材とした一点物で、熟練した縫製士たちにより丁寧に仕立てられており、自然環境の循環やクラフトマンシップの保全など、サステナビリティを意識したクリエイションを行なっています。
美しいテキスタイルをファッションとして次世代へ
世界には様々な素晴らしいテキスタイルがあり、残念ながら既に生産が途絶え、文化として廃れてしまったものもあります。日本はかつて生糸の輸出量が世界一だったこともあり、それぞれの地域の暮らしに根ざした多種多様で豊かな絹織物文化が根付いています。その美しいテキスタイルを伝統工芸に留めておくだけではなく、ファッションとして次世代につなぐため、アップサイクルファッションとしてブランドを立ち上げました。
生産者タグから作り手を感じる
素材としてデッドストックの反物も使用しますが、ほとんどのヴィンテージの絹織物は、着物の形になっていることが多いので、デザイナーが買い付けた古着物を、まずは染工さんで洗い張り(着物を解いて、全てのパーツを一枚につなぎ合わせて反物に戻し、洗濯すること)をします。
同時に、デザイナーがシルク生地の性質を考慮しながらデザインを制作し、パタンナーさんが型紙を引きます。一般的な生地幅は110cm程度ですが、着物地の幅は約38cm、長さ12m程度と限られているため、つなぎ合わせる場所や生地用尺などを計算しながら制作可能な型を起こしていきます。
その次に、トワルチェックといって、シーチングを使って実際に衣服を縫い、シルエットやサイズなどを確認します。問題があれば修正をし、生産可能な状態になれば、デザイナーがその型にふさわしい生地、ボタンやファスナー などの副資材を選び、縫製士が型紙を元に柄合わせしながら生地を裁断、丁寧に縫い上げ、製品にします。
MUSKAANのアイテムには、工程ごとに担当者の名前を記載したタグをつけているので、是非そちらをご覧いただき、衣服からつくり手の気配を感じてください。
ものづくりとは、アイディアやデザインの力を用いて、世の中をより豊かにすること
私にとってものづくりとは、アイディアやデザインの力を用いて、他者と時空や思想の共有を促す媒介を生み出し、世の中をより豊かにすることです。
私がものに惹かれるのは、工芸品などを含む、ものづくりから生まれた形ある物質を介して、つくり手やその土地の精神性を享受し、文字ではない言語による対話をしていると感じるからです。そういう経験を繰り返す中で、様々な思想や美意識に巡り合うとき、とても幸せな気持ちになります。多様な考えが同時に存在していることは社会に豊かさを生む。それが結果、私たちの住環境をサステナブルなものにしていくのだと信じています。
作品を作り続けられているのは、地元である熊本に拠点を置きながら、定期的に東京に出向きインスピレーションを感じる、というバランスを大切にしているからこそだと感じています。
2014年以降東京を離れ、海外で2年ほど過ごした後、地元の熊本で生活をしています。地方には四季の移ろいの中で自然を身近に感じる要素がたくさんあり、その土地の恩恵を受けながら生活することで、精神的にも肉体的にも健康でいられるような気がします。
それと同時に、クリエイティビティが枯渇しないよう、定期的に東京を訪れ、気になる展覧会に足を運んだり、人と会ったりしながら、都会的で洗練されたアイディアを得るよう努めています。常に良いインスピレーションを受け取れる自分でいること、そしてその環境を作ることを意識しています。
MUSKAANでは全アイテムを作品とは捉えておらず、ご購入いただいたお客様が袖を通し、生活の中で実際に使っていただく製品と考えています。
元の着物を着ていたのはどんな女性であったか、ということに思いを馳せ、また、生まれ変わったそれぞれのアイテムを手に取ってくださる方を想像しながら制作しています。
より少ない生産と共存による脱成長社会を
グローバル資本主義によって、格差と支配構造が世界を覆っている今、自給を取り戻し国内生産の割合を増やしていくことが重要だと考えます。すべての人が豊かに暮らすためには、大量生産と競争による社会ではなく、より少ない生産と共存による脱成長社会を目指さなくてはなりません。
そのためにも、誰もがつくり手になれるよう、ものづくりにアクセスしやすい環境を整える必要があります。自ら手を動かすことは色々な発見や気づきを与えてくれます。テクノロジーの発展により、デザインすることや服作りが身近になれば、産業だけでなく、社会全体が豊かになると期待しています。
服を着ることは、自分がどう生きたいかを表すこと――
元来、着物(染織品)の原料である絹、麻、綿、そして草木染めの染料たちはみな、大地からの恵みです。土のにおい、空の青さ、雨の音、そこに人の手が加わり糸や布に成ってゆきます。絹はお蚕さんが吐く繭糸からできていますが、養蚕の仕事はその食餌である桑の栽培からスタートするため、農を基本とした循環の中にあります。
MUSKAANでは正絹とよばれるシルク100%の着物地を主な素材としており、1着の服を仕立てるのに、およそ3000頭のお蚕さんの命をいただいて織られた着尺一反分を必要とします。生き物の命をいただくからには、一命を使い切り、循環と再生を促すことが欠かせません。
服を着ることは、自分がどう生きたいかを表すこと。
ファッションには、自分も社会も変容させるパワーがあります。
自然の恩恵を纏い、自分の内側に向き合うことで、美しい人が育まれるのだと思います。
日本の風土や気候が生んだ独自の色や図案など、地域色豊かな絹織物文化が各地にあります。
廃棄物の問題に取り組むことは別として、この土地に根ざす美しいシルク製品をファッションとして楽しんでいただけたら嬉しいです。