完熟梅ジャム
「梅仕事」という言葉だけでは、語り尽くせない物語。
古くから梅の名所として知られる、神奈川県小田原市の曽我梅林。
春には約3万5千本の白梅が咲き誇り、初夏には生命力あふれる実をつけます。
私たちのジャム作りは、その一粒一粒と対話することから始まります。
使うのは、梅の王様とも呼ばれる「南高梅」。
私たちは、青い実を収穫するのではなく、樹の上で太陽の恵みを最後まで受け、自然に熟し、フルーツとしてのポテンシャルが最大限に高まった「完熟梅」だけを待ちます。
しかし、私たちのこだわりはそこで終わりません。
収穫した完熟梅を、さらにじっくりと寝かせ、「追熟」させるのです。
この時間が、梅の内に秘められた芳醇な香りを呼び覚まし、酸味のカドを取り、まろやかで深い甘みを育んでいきます。
日々、梅の状態を見極め、最高の瞬間を逃さない。
それは、まるで我が子を育てるような、根気と愛情のいる作業です。
甘みには、てんさいから作られる甜菜糖を。
そのすっきりとした優しい甘さは、梅本来の繊細な風味を一切邪魔することなく、むしろその輪郭を際立たせてくれます。
火にかける時間、混ぜる速度、全ては職人の五感だけが頼り。
こうして、自然と人の手によって、梅はただのジャムではない、
一つの作品へと生まれ変わります。
曽我梅林の風と、太陽の記憶、そして作り手の想いが溶け込んだ一瓶を、ぜひご賞味ください。