【箸以外も入るよ】地場織物の箸袋
架け箸について
中東パレスチナの地場産業を活かした手仕事を扱う「架け箸」です。
オリーブウッドの日用品と、アップサイクルを取り入れたファッションアイテムを、生産地パレスチナから直接、心を込めてお届けします。
私達がお届けしたいのは、暮らしに寄り添ってくれる手仕事のパワーです。
私達を取り囲む大量生産された工業製品は、確かに買いやすい値段で、規格も揃っています。でも、何か五感で惹かれるものがあって、悩んで買ったものや、おばあちゃん、おじいちゃんから受け継いでもう何十年も経つもの、作った人の顔が分かるもの、ひとつひとつ形の違うもの。そうしたものは、色褪せずに私達の暮らしを支えてくれます。
廃棄を減らす取り組み「アップサイクル」、熱いのはヨーロッパだけではありません。
架け箸の生産地パレスチナで活躍する女性起業家アイシャさんが、後進国と言われることの多いパレスチナで、メラメラ燃える思いを胸に日々飛び回ってそうした製品づくりに取り組んでいます。
そのビジョンと色彩感覚に惹かれて、彼女のブランドAisha Designとの協働を2020年12月から始めました。
箸袋を協同制作したいと思ったきっかけは「Instagram」
Aisha Designを知り、協働したいと思ったきっかけは、Instagramです。
ある日流れてきたアイシャさんの作品を見て、アップサイクルを取り入れた伝統の織物の絶妙なバランス感覚や色彩に惚れたのがきっかけでした。パレスチナは、占領下にあることから経済発展も制限されており、日常的な人権侵害のなかで環境問題に思考を向け、行動している人がいることにとても感銘を受けました。また、関わり始めてからも、手に入るものに制約があるなかでのアイシャさんのものづくりの力強さとバラエティの豊かさに驚かされます。
アイシャさんから、こだわりや出来上がるまでの苦労、想いなどをお話いただきますね。
―アイシャさん
「デザインや細部を生み出していくときは時間が経つのを忘れるほどです。コンセプトや素材、形状、シンボル、リデザイン、スケッチを実際のモデルに落とし込むことや、様々な要素をはらみ完成したプロダクトが私の情熱であり、困難や障害、日々の挑戦を生き抜く支えになります。
女性起業家の困難は世界共通かもしれません。しかしパレスチナではその困難は複層的です。占領下にあるために、町と町の間にはバリアがあり、政治的経済的な状況は不安定です。
また、環境への関心はいまだ低く、国内での販売に影響しています。
伝統的な工芸を会得した技術のある労働者を探すのも今日では難しくなっています。
パレスチナ独自の国境がないために、荷物は一度イスラエルの郵便局に送らなければいけません。そのため送料が高い上、コロナ禍の影響で運賃が値上がりしています。」
パレスチナの職人 アイシャさんとの出会い
多くのパレスチナの方々が箸袋の制作に関わっています。
―アイシャさんが布を集めて回る先の家具工場の方々
―カフィーヤ工房(伝統的な織物を生産するパレスチナで唯一稼働している工房)の方々
―オリーブのボタンを作っている架け箸のもうひとつのパートナー団体HLHCS
―アイシャさんの従業員の女性達
―必要に応じて間に入る通訳の方
アイシャさんは情熱的でとてもしっかりした真面目な女性です。
ビジネスコンテストで最優秀賞を取っているので、ビジネス的才覚もあるのだと思います。パレスチナの方らしいと言いますか、粋な計らいをしてくださったりもします。しかし、民族・生まれた場所の違いよりも、同じ未来を志向する女性として共感する部分のほうがたくさんあります。
出会いはInstagramです。彼女の製品を見て、その理念もさることながら、製品の可愛さに惚れてDMでアタックしました。コロナ禍だったので、まだお会いすることは叶っていません。
また、アイシャさんに働く環境について話を聞いてみました。
―アイシャさん
「自宅で仕事をしています。家族と共同の小さな家に住んでいて、仕事に使えるのは1×3Mのスペースです。私と共に働いている従業員の女性達も同じように家で仕事をしています。仕事専用の環境が欲しいとは思いますが、私の町では家賃がとても高く、なかなかそれが叶いません。今は金銭的に難しいですが、将来的には場所を確保したいです。」
紙の上でデザインするところから始まるものづくり
まず、ものづくりは紙の上でデザインするところから始まります。
それからパターンや刺繍の紋様をスケッチし、コンピューターに落としていきます。
それを印刷したら、スケッチした大きさの布にそのパターンを施していきます。
次に、ストックにあるなかから布と色味を選んでいきます。
それから、製品モデルに合わせて裁断します。
ここまではプロジェクトデザイナーのアイシャ・ドゥウェイカット自身がおこないます。
その後、裁断したものを刺繍したり縫製したりするため、従業員の女性達に送ります。
出来上がったら、商品の品質と仕上げ部分をそれぞれチェックします。
ようやく、商品は梱包され、国内外に向けて配送されます。
アイシャさんに、箸袋をつくっているときに考えていることを聞きました。
―アイシャさん
「ものづくりへの情熱を感じながら、どんなデザインにしてどんな仕上がりにするかなどを考えつつ、より良い製品作りに没頭します。」
ものづくりは「過去から現在への祖先のルーツの延長」にある
アイシャさんに、ものづくりに対する想いを聞いてみました。
―アイシャさん
「ものづくりは過去から現在へのルーツの延長にあります。それは、情熱と愛情と経験、技術、オリジナリティ、忍耐、イノベーション、創造性を含み合わせ、現代的なスタイルの手工業で、過去からその尊さや真正性を受け継いでいくことの上に成り立つものです。
私が箸袋を含む様々な商品を作り続けている理由は、0から価値のあるものを生み出すこと、デザインすることへの愛と情熱です。大学卒業後の私は、単に仕事を得ることもそうですし、学んできたデザインの分野を活かし伸ばしていける仕事も見つけることが出来ませんでした。
しかし私はこの仕事を通して、自分自身にデザインを深め、実践を積む機会を作り出しました。さらには周辺化された地域の女性達とくに若い人に仕事をもたらすことにもなりました。
パレスチナの外で通用する質の高いパレスチナブランドを作り、パレスチナ社会のなかで再利用(リユース)の文化を広めていくのが私の夢です。」
周りを思いやることのできる社会をつくりたい
架け箸は、ものづくりと販売を通して、周りを思いやることのできる社会になっていけばいいと願っています。
ひとりひとりは素敵なのに、人類は集団になったり、権力を握ったりすると、思いやりにかけ、残酷なことを平気でしてしまう生き物だと思います。そのしわ寄せは、地球環境、他の生物、そして身内であるはずの人間にまで及び、表面上平和そうに見えても、私達は矛盾と搾取に溢れる世界に生きているのが現状です。
周辺化されたパレスチナの人達と共にものづくりをすること、一緒にお仕事をさせていただくことは、優しい世界を作りたいという、架け箸の意思表示です。
アイシャさんの理想の未来も聞いてみました。
―アイシャさん
「新しい多文化な市場に向かって、サステナブルであること、継続していくこと、発展していくこと、そして恒久的に成長していくことを願います。」
パレスチナの暮らしと美しさ、物語を伝えたい
箸袋を買う人、使う人に伝えたい想いをアイシャさんに聞きました。
―アイシャさん
「歴史的に、私の故郷ナブルスは工芸の町でプロフェッショナルなコミュニティが育まれてきました。私アイシャ・ドゥウェイカットは町の遺産に誇りを持ち、パレスチナ文化を促進するとともに、サステナビリティとエシカルプロダクションに向けた世界的な取り組みに自身の能力をもって貢献すると心に誓っています。
その観点から、私は環境に優しい製品づくりに乗り出しました。ジェニン難民キャンプでデザインコンサルタントに任命されたとき、私はシルバーとオリーブウッドを使ったオリジナルアクセサリー作りを始めました。この時、リサイクルされた製品への興味が刺激され、布の端切れという難民キャンプで唯一入手可能だった素材を使って難民のための教育玩具をデザインするのに夢中になったのでした。伝えたかったのは過剰な消費行動や環境への悪影響についてでした。それから、そのままではただ捨てられる運命にあった布や皮革の端切れを活用するようになったのです。
プロダクトはほかにも幅広く作っており、アクセサリーからカバン、クッションカバー、テーブルランナー等、環境に配慮したラインナップになっています。アイシャデザインはまた、周辺化された女性達に雇用機会と収入を生み出すコミュニティプロジェクトでもあります。すべての製品は手仕事で作られており、パレスチナの難民や低収入の女性作家の手によって刺繍されています。2015年、アイシャデザインは地元の大会で最優秀ビジネスプラン賞を受賞し、地中海地域の最優秀プロジェクトにもノミネートされました。ボランティアの力を信じコミュニティでも積極的に活動しています。売り上げの一部は地元の植樹活動に使われています。世界中で販売できるオンラインショップを開くのが将来の目標の一つです。」
「ひとつひとつの製品から、ここパレスチナの暮らしと美しさ、物語、そして人々にはこの土地の上で平和に暮らす権利があるのだということを感じて欲しいです。
そして、異なる人々を繋ぐ”橋”である人間のメッセージが伝わって欲しいと願っています。」
(おまけ)架け箸代表の幸せ時間
慌ただしい普段よりスローダウンした休日のひととき。
ギターを弾いたり散歩したり語学を勉強したりするのが好きですが、最近はあまり休日がありません。休まないとと思いつつ、まだ未熟な身なのでやることも多く・・・
あとは、冬のつんとした空気を吸い込むと幸せな気持ちになりますね。