近年、サステナブルファッションの潮流とともに注目を集めているヴィーガンレザー。動物性素材を使用せず、環境にも配慮した次世代の革素材として、ファッション業界で革新的な変化を起こしています。本記事では、ヴィーガンレザーの特徴や種類、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
ヴィーガンレザーの特徴とは
動物性原料を一切使用せず、環境負荷を抑えた革の代替素材として注目を集めるヴィーガンレザー。従来のフェイクレザーやエコレザーとは異なり、より持続可能な製造方法と高い品質を追求した新しい素材です。その特徴と従来の代替革との違いについて詳しく見ていきましょう。
フェイクレザー、エコレザー、ヴィーガンレザーの違い
代替革製品には様々な呼び方がありますが、その定義や特徴には重要な違いがあります。フェイクレザーは単純な合成皮革を指す言葉であり、主にポリウレタンや塩化ビニルなどの石油由来素材を使用して製造されます。一方、エコレザーは環境負荷を考慮して製造された合成皮革を指し、有害物質の使用を抑えた製造方法を採用しています。
これに対してヴィーガンレザーは、動物性原料を一切使用せず、かつ環境負荷を最小限に抑えることを目指した革の代替素材です。特に近年は、植物性原料を活用した革新的な製造方法が開発され、従来の合成皮革とは一線を画す品質と環境性能を実現しています。
素材の種類 | 主な原料 | 環境配慮 | 動物性原料 | 耐久性 |
---|---|---|---|---|
フェイクレザー | 石油由来 | 低い | 不使用 | 中程度 |
エコレザー | 石油由来(環境配慮型) | 中程度 | 不使用 | 中程度 |
ヴィーガンレザー | 植物由来/合成素材 | 高い | 不使用 | 高い |
ヴィーガンレザーの注目を集める理由
環境問題への意識の高まりと動物愛護の観点から、ヴィーガンレザーは世界的に注目を集めています。従来の革製品が抱える環境負荷の問題や、動物福祉の視点から、より持続可能な選択肢としてヴィーガンレザーへの期待が高まっています。
リアルレザーと環境負荷の問題
従来の革製品製造過程では、大量の水資源を消費し、なめし工程で使用される化学物質による環境汚染が深刻な問題となっています。一頭の牛から革製品を製造する過程で、約16,000リットルもの水が必要とされ、その過程で発生する廃水には重金属や有害な化学物質が含まれることが多々あります。
また、家畜の飼育に伴う温室効果ガスの排出も大きな環境問題となっています。畜産業は世界の温室効果ガス排出量の約14.5%を占めており、その中でも革製品の原料となる牛の飼育は特に大きな環境負荷を与えています。
アニマルウェルフェアの視点
動物の権利や福祉に対する意識の高まりも、ヴィーガンレザーが注目される大きな要因となっています。従来の革製品の製造過程では、多くの動物たちが犠牲になっており、その飼育環境や処遇に関する倫理的な問題が指摘されています。
特に、工業的な規模での家畜の飼育においては、限られたスペースでの過密飼育や不適切な取り扱いなど、動物福祉の観点から問題視される事例が多く報告されています。これに対してヴィーガンレザーは、動物性原料を一切使用しないため、こうした倫理的な問題を完全に回避することができます。
ヴィーガンレザーの種類と特性
現在、様々な種類のヴィーガンレザーが開発・製造されています。従来の合成皮革から、最新の植物由来素材まで、その特性や製造方法は多岐にわたります。それぞれの特徴を理解することで、用途に応じた最適な選択が可能となります。
ヴィーガンレザーの種類:合成皮革
最も一般的なヴィーガンレザーの一つが合成皮革です。主にポリウレタンや塩化ビニルなどの化学合成素材を使用して製造されます。近年は、環境負荷を考慮した水性ポリウレタンの使用や、リサイクル素材の活用など、より環境に配慮した製造方法が採用されています。
特徴として、比較的安価な価格帯で提供できること、大量生産が可能であること、さらに耐久性や防水性に優れているという利点があります。ただし、石油由来の原料を使用するため、生分解性には課題が残ります。
合成皮革の種類 | 主な特徴 | 環境負荷 | コスト | 耐久性 |
---|---|---|---|---|
従来型PU合成皮革 | 防水性が高い | 中程度 | 低い | 中程度 |
水性PU合成皮革 | 有害物質少 | やや低い | やや高い | 中程度 |
リサイクルPU皮革 | 廃材活用 | 低い | 中程度 | 中程度 |
ヴィーガンレザーの種類:人工皮革
人工皮革は、合成皮革よりも高度な技術を用いて製造される高品質な代替革です。極細の合成繊維を不織布状に絡み合わせ、特殊なポリマーで結合させることで、本革に近い風合いと耐久性を実現しています。
製造工程では、マイクロファイバー技術を駆使することで、天然皮革に似た通気性や吸湿性を持たせることが可能となっています。また、表面加工技術の進歩により、様々な質感や風合いを表現できるようになっており、高級革製品の代替材料としても注目されています。
ヴィーガンレザーの種類:天然由来のヴィーガンレザー
最も革新的で注目を集めているのが、植物や微生物などの天然由来原料を使用したヴィーガンレザーです。パイナップルの葉から作られるピニャテックス、サボテンから作られるデセルトレザー、リンゴの搾りかすを活用したアップルレザーなど、様々な素材が開発されています。
これらの天然由来ヴィーガンレザーは、生分解性が高く、製造過程での環境負荷も比較的小さいという特徴があります。また、農業廃棄物や食品加工の副産物を活用することで、資源の有効利用にも貢献しています。
植物由来のヴィーガンレザーの一覧
植物由来のヴィーガンレザーは、環境負荷を最小限に抑えながら、独特の風合いと機能性を持つ革新的な素材として注目を集めています。農業廃棄物や未利用資源を活用することで、サステナビリティと革新性を両立させた次世代の革素材として、ファッション業界に新たな可能性をもたらしています。
パイナップルレザー:【PINAMORE】

パイナップルからできたサステナブルブランド”PINAMORE” 。パイナップルの葉から作られた新素材「ピニャテックス」を使用しています。ピニャテックスは、従来の革製品に代わるエコフレンドリーな素材であり、環境に優しいだけでなく、耐久性と柔軟性にも優れています。

【PINAMORE】パイナップルからできた三つ折り
財布
コンパクトな三つ折りタイプのミニウォレットです。
パイナップルの葉:72%など、植物由来比率90%以上なので、和紙のような柔らかな手触りと風合いが最大の特徴です。
植物由来比率の低い合皮に近いヴィーガン製品と違い、真剣に環境に配慮し、植物性製品という選択肢を提供します。
サボテンレザー:「CACTUS TOKYO」
「CACTUS TOKYO」は、「心躍る、明日をつくる」をテーマに、高品質な財布・カバンをお届けするブランドです。見た目や機能性が洗練されているのはもちろん、サボテン由来のレザー素材の活用を中心に、ブランド運営のあらゆる側面を通じて、地球環境への負荷軽減を目指しています。

サボテン由来のミニウォレット
お札を折り曲げずに収納することができて、カードや小銭も十分に入る。なおかつ、片手に収まってしまう絶妙なサイズ感のお財布です。
インナー部分には開いた際にカードが見えない、ミニマルでクリーンなデザインになっています。 カード類はお札入れ部分に約9枚収納可能(カードの厚みによって前後)です。
ココナッツレザー:never leather
never leather は、非常にエコな素材【ココナッツレザー】からできています。実はココナッツレザーとは一般呼称であり、正式名称ではありません。
南インドにある Malai Biomaterial社が製造する新素材のバイオマテリアルなのです。
使用する原料全てが天然のもの。
- 廃棄予定だったココナッツウォーター
- 麻の繊維
- バナナの茎の繊維
- 天然樹脂
さらには、染色も全てインド産の植物由来染料を使用するというこだわりよう。いわゆるレザーの代替ではなく、地球環境を尊重する、新しい素材です。

never leather 名刺入れ
ビジネスシーンで活躍する名刺入れ。
ココナッツウォーターから生まれたヴィーガンレザーの、温もりとラフさを感じさせるユニークな素材感は、ちょっと人に自慢したくなる逸品。
ヴィーガンレザーのメリットとデメリット
ヴィーガンレザーは、環境配慮型の革代替素材として多くの利点を持つ一方で、いくつかの課題も抱えています。製品選択の際には、これらの特徴を十分に理解し、用途に応じた適切な判断を行うことが重要です。
ヴィーガンレザーの利点
ヴィーガンレザーの最大の利点は、その環境負荷の低さと倫理的な製造プロセスにあります。従来の革製品製造と比較して、水資源の使用量が大幅に削減され、有害な化学物質の使用も最小限に抑えられています。
また、製造工程でのカスタマイズ性が高く、様々な色や質感を自由に表現できることも大きな特徴です。さらに、天然皮革と比べて軽量であり、お手入れが比較的簡単という実用面での利点も持ち合わせています。
メリット | 具体的な内容 | 従来の革との比較 |
---|---|---|
環境負荷 | 水使用量が少ない、化学物質使用を低減 | 大幅に改善 |
動物福祉 | 動物性原料不使用 | 完全にクリア |
カスタマイズ性 | 多様な色・質感の表現が可能 | より自由度が高い |
メンテナンス | 簡単なお手入れで維持可能 | 手間が少ない |
重量 | 軽量で扱いやすい | 30-50%軽量 |
ヴィーガンレザーの不利点
一方で、ヴィーガンレザーにも改善すべき課題があります。特に従来型の合成皮革を
使用した製品では、耐久性や経年変化の面で天然皮革に及ばないケースがあります。また、高品質な植物由来ヴィーガンレザーは、製造コストが高くなる傾向にあります。
微細なプラスチック粒子の発生や、製品寿命後の廃棄処理についても、継続的な改善が求められる課題となっています。ただし、これらの課題に対しては、新素材の開発や製造技術の革新により、着実な改善が進められています。
デイリーで楽しむヴィーガンレザーの魅力
ヴィーガンレザーは、その多様な特性を活かして、日常生活のさまざまなシーンで活用することができます。バッグや財布などの小物から、靴、衣類、家具に至るまで、幅広い製品展開が進められています。
特に注目すべきは、ヴィーガンレザー製品の品質が年々向上していることです。耐久性、通気性、質感など、あらゆる面で改善が進み、従来の革製品に引けを取らない製品も多く登場しています。また、ファッションブランドやデザイナーとのコラボレーションにより、デザイン性の高い製品も増加しています。
まとめ
ヴィーガンレザーは、環境保護と動物福祉の両面から、次世代の革素材として大きな期待が寄せられています。技術革新により、その品質と機能性は着実に向上しており、従来の革製品に代わる選択肢として、確固たる地位を築きつつあります。
特に植物由来のヴィーガンレザーは、サステナビリティとファッション性を両立した革新的な素材として、今後さらなる発展が期待されます。消費者の環境意識が高まる中、ヴィーガンレザーの市場は着実に拡大を続けており、より多くの人々が環境に配慮した選択肢としてヴィーガンレザー製品を選択するようになっています。
今後も新素材の開発や製造技術の革新により、ヴィーガンレザーの可能性はさらに広がっていくことでしょう。環境に配慮しながら、スタイリッシュなライフスタイルを楽しみたい方にとって、ヴィーガンレザーは魅力的な選択肢となっています。